「左脳は論理、右脳は創造」は誤認(2013年5月27日掲載)
確かに人間や他の動物の脳は、左右の半球で構造や機能に差があることが示されています(「左脳」「右脳」という表現は、あたかも脳が左右で独立しているかのような印象を与えるので、ここでは「左半球」「右半球」と呼びます)。例えば言語中枢(発話など)は、右利きの大多数の人で左半球にあるので、その部位を損傷すると発話などが障害されます。また左右の大脳半球は、それぞれ反対側の身体をコントロールしているので、右半球の特定部位を損傷すると左半身に麻痺が生じたりします。しかし、このような脳の左右半球の機能差を拡大解釈して「論理は左脳、創造は右脳が担う」と考えることは、「野球は左半身、サッカーは右半身でプレーする」と考えることと同じくらいナンセンスです。野球もサッカーも全身を複雑に連動させることで初めてプレーできることを疑う人はいないでしょう。それと同じように「論理」や「創造」といった極めて複雑な知的作業は、脳の様々な部位が複雑に連携して初めて可能となります。「サッカーと野球は複雑すぎるし、対となるものでもないから、例として不適切だ」と思うかもしれませんが、「論理」や「創造」といった抽象的な知的作業の方がよほど複雑ですし、そもそも「論理」と「創造」を反対のものと考えること自体が不思議です。さらに、左半球にある言語中枢は、あくまで発話や聴覚理解などの中枢であり、論理的思考の中枢ではありません。


睡眠学習って本当に効果あるの?(2013年3月25日掲載)

朝は仕事がはかどるって本当?(2012年11月19日掲載)

年を取るほど時間は早く経つ?(2012年8月6日掲載)
「時間感覚が年を経るに連れて短くなるのは、既に”ジャネーの法則”で説明されている」というご指摘がありますが、(a)ジャネーの法則は感覚を定式化したに過ぎず、その感覚が生じる認知的メカニズムについては説明していない、(b)ジャネーの法則は哲学的議論から生まれたものであり、厳密な心理物理的方法に則って検討されたものではない、という点から記事中では触れておりません。また、本記事はあくまで個人の主観としての時間感覚について書かれたものであり、当たり前ですが時間の流れそのものが歪むと述べているわけではありません。

脳はマルチタスクを実行できない?(2012年7月9日掲載)

脳は記憶を書き換える?(2012年6月11日掲載)